大会長挨拶
この度、中央大学理工学部(後楽園キャンパス)において、第21回日本血液代替物学会年次大会を開催させて頂くこととなりました。日本血液代替物学会は、昨年 設立20周年を迎え、記念大会を奈良で成功裏に実施致しました。今年は第21回、つまり次のステージへの新たな一歩を踏み出す重要な大会となります。
現在日本では、輸血用血液の85%が50歳以上の患者さんに使用されています。今後少子高齢化が進み、輸血を必要とする高齢者の数が増え続け、献血者層(若年層)人口が減少すると、13年後の2027年には“年間100万人分の血液が不足する”と予測されています(日本赤十字社推計、政府広報)。さらに先の大震災以降、危機管理の主要施策として血液代替物の実現がますます強く望まれる状況になってきました。
我国における人工赤血球の開発は、安全性と有効性の確認されたヘモグロビン小胞体が臨床試験体制の確立を急ぐ段階にきています。人工血小板の開発は、H12-(ADP)リポソームの非臨床データが着実に蓄積されています。そのような時期に少し視野を広げ、新しい応用/物質/技術を積極的に提案・議論することは、次の扉を開く重要な鍵となるのではないでしょうか。そこで本大会は、主題を『血液代替物(人工血液)開発の新戦略』とし、人工血液の用途展開のさらなる拡充、新しい化合物の可能性にも焦点をあてながら、血液代替物研究の裾野を拡げる企画を盛り込みました。産官学の研究者・医師たちが横断的に実用化の具体策や次世代物質に関する意見交換を行うことにより、これまでとは少し違った切り口から血液代替物の最新動向と今後を展望したいと思います。
活発な討論で本大会が実り多きものになるよう、是非皆様方の御参加をお待ちしております。
第21回日本血液代替物学会年次大会
大会長 小松 晃之
(中央大学理工学部 応用化学科 教授)